高齢な親が食事をしてくれなくて不安だわ。どうにか食べてくれる方法はないかしら。
親が高齢になると、食事をさせるだけで大変ですよね。せっかく用意した料理を食べてくれないとストレスが溜まるだけでなく、親の健康面が不安になります。
食事からの栄養が摂れないと、身体が弱って筋力も低下します。食べないからと放っておくと、重度の健康被害や介護が必要になってしまいます。
しかし嫌がらせで食べないわけではありません。高齢な親自身も食べれなくて苦労していることがほとんどです。
そこでこの記事では、調理師の私の目線で、高齢になった親が食事をしてくれない理由を5つ紹介します。
記事を読むことで、高齢な親への理解が深まり、問題を解決するためのキッカケになれば幸いです。
高齢な親が食事をしてくれない5つの理由
親が高齢になると、なかなか食事をしてくれません。サポートする家族としては、食事をしてもらうだけでも一苦労です。
高齢な親が食事をしてくれない理由を5つ紹介します。
高齢な親が食事をしない理由① 口の中が痛い
食事をしてくれない高齢者のなかには、口の中の痛みが原因なことがあります。口の中が痛いと、食事そのものが億劫になります。
口の中の痛みは、おもに以下の3つです。
- 口内炎
- 歯周病
- 虫歯
外から見ても気付きにくいので、本人しかわからない悩みです。口の中が痛いと、食欲があっても食べられないという苦痛に悩まされます。
食事をするだけで痛みが伴うので、徐々に食事を避けてしまいます。食事中の親の様子に異変があれば、専門医を受診してください。
高齢な親が食事をしない理由② 味覚が変わった
高齢になると味覚が変わることがよくあります。味覚を感じるための味蕾の数が減ったり、薬の副作用があるからです。
高齢者の味覚には以下の特徴があります。
- あっさりした味付けを好む
- 淡白な食材が好き
- 味を感じにくい
味の好みが急に変わったり、味が薄く感じることが多いです。
味覚が鈍くなると味を感じにくくなります。味が薄いからといって濃い味にすると高血圧などの健康被害の原因になります。
「味がない」と言われても、高齢者の健康のためには味付けを抑えた食事にする必要があります。
高齢な親が食事をしない理由③ 食事が楽しくない
高齢になった親が食事をしない理由で多いのが、食事そのものが楽しくないからです。楽しくないから食事が億劫になります。
特に、熟年離婚や配偶者の不幸によって突然一人暮らしになった場合に起こりやすいです。食事中の会話や空気が一気に変わるので、食事の楽しいイメージもなくなります。
一人暮らしで食事が楽しくないからと、コンビニ弁当やパンで済ませる高齢者も多いです。健康に悪いだけでなく、徐々に食欲も低下していきます。
一人でも楽しめる工夫があると、食事を拒むことが減るでしょう。
高齢な親が食事をしない理由④ 食べにくい食材が増えた
高齢になると食べにくい食材が増えます。食事のための機能が低下するからです。
高齢者が食べにくい代表的な食材は以下の通りです。
- 繊維が多くて硬い
- ごぼう、れんこん などの硬い食材
- 口の中に張り付く
- のり、わかめ などの海藻類
- 水分が少ない
- せんべい、トースト などの乾き物や焼きのも
- 粘りが強い
- もち、納豆 などの粘り気や伸びる食材
- すする力が必要
- ラーメンやそうめん などの麺類
若い人なら問題ない食材でも、高齢になると食べにくいものばかりです。
高齢な親へ料理を作るときや、弁当を用意してあげるときは、上記に該当しないかチェックしてください。
食べにくい食材が増えると、食事そのものが億劫になります。食事に対するストレスが溜まるからです。
高齢な親が食事をしない理由⑤ 噛む力や飲み込む力の低下
高齢になると、噛む力や飲み込む力が低下します。顎の筋力低下や歯の本数が減ることが原因です。
食事をするだけで大変だと、食事がめんどくさいというイメージになります。
噛む力が低下すると硬い食べ物や大きなものは食べられません。食事がしやすいように食材選びや調理方法の工夫が必要です。
- 柔らかい食材を選ぶ
- 食べやすいサイズにカット
- 柔らかく調理する
まずは、負担の少ない柔らかい食材を選びましょう。食材の下ごしらえで小さくカットし、蒸したり茹でたりして柔らかく調理をしてあげましょう。
高齢な親の状態にあわせて柔らかさを調整してください。端で切れる柔らかさか、舌で潰せるくらいの柔らかさを基準にしましょう。
食事をしない高齢な親にはどうしたらいいの?
親が高齢になると食事が嫌になることがあります。では、高齢になっても食事をしてもらうにはどうしたら良いでしょうか?
なかなか食事をしない高齢な親のためにできる対処方法を3つ紹介します。
食事を工夫する
高齢な親に食事をしてもらうには、料理を工夫する必要があります。高齢になるとさまざまな機能が低下し食事に抵抗を感じやすいからです。
食材の柔らかさや味付けなど、気を配ることが多くなるでしょう。
あまりにも食事への抵抗が強いと、同居していても別メニューを作る必要もでてきます。別居しているなら料理を届けなければいけないので、さらに大変です。
毎食を工夫したり、届けるのが困難な場合は、宅配弁当サービスをうまく活用すると良いでしょう。下記の記事では、高齢者が安心して利用できるサービスを厳選して紹介しています。
高齢者におすすめ冷凍宅配弁当サービス7選!失敗しない3つのポイント
サプリメントで栄養を補う
食事からの栄養摂取が不十分なら、サプリメントで補いましょう。高齢になると栄養不足によりさまざまな悪影響が目立ってきます。
とくに高齢者が不足しがちなのは以下の3つです。
- カルシウム
- 不足すると骨が弱くなります。壁にぶつけたり、転んだだけで骨折する高齢者は多いです。
- タンパク質
- 皮膚や骨、臓器の働きに欠かせない栄養です。食が細い高齢者にもおすすめ。
- カロリー
- 栄養と合わせて摂取を心がけてください。高齢者の痩せすぎは危険です。
カロリーの摂りすぎは肥満の原因になりますが、ほとんどの高齢者はカロリーが不足しています。痩せすぎないためにも、カロリー摂取は心がけてください。
サプリメントの目的は「栄養を補うため」なので、優先的に使うのはNGです。
なるべく食事からの栄養摂取を意識してください。食事ならではのメリットがあるからです。
■ 味覚や嗅覚に刺激を与える
■ 噛むことで脳が活性化する
■ 胃腸の動きを活発にする
元気な高齢者は例外なくしっかりと食事をしています。何らかの理由で食事ができなくなると、老けたりボケることは珍しくないです。
噛むことは脳の活性化だけでなく、唾液の分泌によって口内環境を整えてくれます。元気で健康を保つためにも食事を優先に考えてください。
食事から栄養を摂ることで、心と体に良い影響があります。あくまでもサプリメントは栄養を補うためだと認識してください。
家族と同居する
一人暮らしの寂しさが原因で食事をしない高齢者なら、家族との同居を検討してください。家族との同居で元気になり、改善することがあります。
熟年離婚や配偶者の不幸などで急に一人暮らしになると、下記の理由で食事に抵抗を感じやすいです。
- 一人暮らしの高齢な父:食事の用意ができない(わからない)
- 一人暮らしの高齢な母:料理を用意する意欲が湧かない
改善するためにも高齢な親との同居がおすすめですが、いくら親でも同居ができないことが多いでしょう。居住スペースの確保や人間関係など、さまざまな問題があります。
どうしても同居ができないなら、老人ホームやデイサービスの利用を検討してみましょう。人との関わりから寂しさを解消し、食欲が改善することがあります。
農林水産省の「食育に関する意識調査報告書」によると、70代女性の4人に1人はひとりで食事をしています。ひとりで食事する理由は、一緒に食事する相手がいないからです。高齢者の孤独な食事は問題となっています。
ちなみに、高齢な親が食事をしないからといって「ちゃんと食べてよ!」とプレッシャーをかけるのはNGです。食事ができなくて1番苦しんでいるのは高齢な親自身です。
とはいえ食べないまま放置すると栄養不足につながる危険性があります。食事をしない理由を把握して、高齢者でも食べやすい環境づくりが重要です。
【高齢者の一人暮らし】孤食が問題視されている理由と4つの解決方法
高齢な親が食事をしない理由に寄り添った対策が重要
この記事では、高齢な親が食事をしない理由と対処方法を紹介しました。
高齢になるとどうしても食事が億劫になったり、抵抗を感じやすくなります。食事をしない理由は以下の5つです。
- 口の中が痛い
- 味覚が変わった
- 食事が楽しくない
- 食べにくい食材が増えた
- 噛む力や飲み込む力の低下
どれも高齢になると仕方がないことです。
しかし、原因がわかれば料理を工夫したり、サプリで栄養を補ったり、人との関わりを増やすなど対策ができます。
近年だと高齢者向けの宅配弁当サービスや、老人ホーム・デイサービスも充実しています。家族だけでのサポートが難しいなら、便利なサービスをうまく活用しましょう。
「手間を省く=手抜き」ではありません。
むしろ、高齢な親にとっては「手間をかけてしまって申し訳ない」のような遠慮がなくなります。適切なサービスを使うことで高齢な親との関係性を保ったまま快適な生活ができますよ。